9月30日「人待ち小町・妻恋い同心」 松岡弘一 20086月発行 ★★★

 惚れあって一緒になった最愛の妻を、2年前に亡くした定町廻り同心・杉野弥三郎。その妻恋い同心が「おたよ」という娘が働く居酒屋を見張っていた。三年前に言い交した政次郎が現われるのを待つ「おたよ」であったが、その男は博奕で借金を作っては女を誑し込み、そのうえ一家四人を殺して金を奪った極悪人であった。4話のうち、読ませるのは表題の「人待ち小町」だけ。本来★は二つ半というとこか、半分は始めて読んだ松岡弘一に御祝儀。

9月26日「秋月に香る・恋風吉原2」片岡麻紗子200612月発行 ★★★★

前回に興味をもった、片岡麻紗子は2冊目、主人公・恭二郎は暴れ者だった過去をもちながらも、実家の小間物屋を手伝いながら目明しの手伝いをしている。ページをひらいた瞬間、情景が浮かんでくるような文章で、江戸情緒たっぷりの世界を堪能することができる。
ただの謎解き小説ではなく、登場人物をめぐるストーリーも同時に織り込まれており、物語に厚みをだしている。ますます片岡麻紗子にのめり込みそう、シリーズ第1作をあわてて予約した。

9月24日「木戸の武家始末・大江戸番太郎事件帳12」喜安幸夫2008年9月発行★★★

 誘拐された商人の子供が殺され、江戸城の堀で発見されるという、ショッキングな書き出し始まった。共に人には話せない過去を持つ木戸番・杢之助に居酒屋の主・清次が、無難な暮らしを目指せば目指すほど、争いに巻き込まれて行く。裏長屋の住人・松次郎と竹五郎、手習い師範・榊原真吾らの助けを借りて、慎重に事を収めていく。

9月21日「我、言挙げす・髪結い伊三次捕物余話8」宇江佐真理 20087月発行★★★

久々の伊三次登場だが、前作あたりから多くの短編の主役は、伊三次が小者として仕える北町奉行所定廻り同心不破友之進の子息龍之進となっている。伊三次の妻で日本橋の芸者を続けているお文、二人の間に生まれた子供・伊与太も顔を出してはいるが、伊三次、お文の熱烈フアンとしてはちょっと寂しい気がする。
 自ら上司の不正を弾劾して左遷された同心との交流を描いた「我、言挙げす」が印象的である。言挙げという言葉は、自分の意思をはっきりと主張することのことである。奉行所同心としてその生き方を学んだ龍之進の凛々し姿が好印象。しかしこの作品の最後で伊三次の家が火事で全焼する。伊三次、お文たちの今後が気にかかる。

9月15日「やさぐれ・品川宿悪人往来」 犬飼六妓 20088月発行 ★★★

半端な三下やくざ・矢吉は早く一人前のやくざにと功を焦る、伝説の用心棒と勘違いされた酔っぱらい浪人、宿場女郎・胡蝶。三人が火を点けた隣あわせの宿場同士の抗争はやがて、品川宿に血の雨を降らせる。状況説明が多少くどいところが気になるが、作者は新しい時代小説の書き手として注目されている。

9月4日「若草日和」 片岡麻紗子 廣済堂文庫 20088月発行 ★★★

作者は20代で作家デビュー、処女作品「吉原花時雨」(水野武流)でいきなり講談社ホワイトハート大賞を受賞した実力者。17歳になったばかりの若者4人と1歳年下の女一人。うちあけは旗本の三男坊、骨董屋の若旦那、指物職人の倅、貧乏医師を手伝う娘と、それぞれの家柄もまったく異なる若者達の強い絆と、成長していく姿が明るく描かれていく。
 すぐに佐伯泰英の「鎌倉河岸捕物控」が重なって思い起こされた。下敷きの一枚になっているかも知れないが、これは片岡麻紗子流の小説として十分に評価される。シリーズ化されるようなら楽しみに次号を期待する。

9月1日「写楽の首・大江戸瓦版始末2」江宮隆之 20088月発行 ★★★★

 表題作のほか、短編2作で構成。短編集の場合には、どうしても内容にバラつき出る。第一話「神世間異聞」では宗教団体の詐欺まがい行為を暴いていく、またかと思った。しかし第2話以降は読ませてくれる、特に総ページの半分を使った「写楽の首」は力が入っていた。謎の浮世絵師・写楽は小説になりやすい、多くの作家、学者が本当の写楽は誰なのか諸説紛々だ。江宮隆之は写楽複数説をとり、本人探しよりも、1年未満に130枚の浮世絵を描いたその理由に拘っている。もう少し手を加え独立した小説にすれば良かったのではないか。

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