7月28日「にわか大根・猿若町捕物長3」近藤史恵 20063月発行 ★★★

 題名「にわか大根」とは上方への巡業から戻った人気女形が、なぜか突然大根役者になっていたから。「ほおずき地獄」に次ぐ3作目だ。近藤史恵の作風は細かい男女の心模様や、人生の機微が織り込まれて、読後せつない余韻が残る。この作品も、捕物帳ではあるが、単純な犯人探しではない。江戸情趣溢れる連作時代ミステリー。

7月24日「後添え・秋山久蔵御用控11」藤井邦夫2008年6月発行 ★★★★

 何時、一緒になるのかと気を揉んでいた久蔵と先妻の妹・香織が、ある事件を切っ掛けに結ばれる事になった。曰くつきの旗本から、久蔵に急に縁談話が持ち上がった、骨董品を扱う店主が殺され、由緒ある茶碗が消えた。縁談と事件がどう絡んでくるのか。久蔵を想う香織は秋山家から身を引く決心をするが、事件は急転直下。南町の人呼んで剃刀久蔵、同心数馬、岡引の弥平次と手下の面々、彼らのチームワークに無駄が無いうえに、かつ爽やかなのが魅力だ。

7月23日「はぐれ与力・捜し屋孫四郎たそがれ事件帖3」池端洋介20081月発行★★★

 いきなり第3巻を読んだのが失敗だった。シリーズ物には、初めての読者のために毎回うっとうしい登場人物の説明があるのだが、それが無いのだ。しかし話の筋としては面白い。元奉行所与力・井上孫四郎が捜し屋になった経緯をどうしても知りたくなった。これはでは逆に、1、2巻を読むしかない。チャンバラも迫力があるが、味のある人情話がいい。

7月16日「震撼の太刀・織江緋之介見参6」上田秀人20084月発行 ★★★

 四代将軍家綱の時代、次期将軍をめぐり尾張、紀州、水戸の徳川御三家のかけひきの最中、家康が忌み嫌った言われる妖刀・正宗の謎が浮かびあがる。時代を80年以上も遡る天正十年、明智光秀の謀反により、天下統一まであと一歩というところで織田家は滅びた。明智のあとに豊臣、そして徳川。そのすべてが先の覇者を滅ぼしている。御三家のもつ村正に家康の教訓が隠されているという。なんとか我慢しながら読み終えて、多少だが初代家康から五代綱吉までの頭の整理ができた。そこそこ面白いが、かなり草臥れる小説だ

7月11日「男坂・とんび侍喧嘩帳2」永井義男200711月発行 ★★★★

 勝小吉勝麟太郎(のちの勝海舟)を扱った小説は数多い。代表的なのは子母澤寛の「父子鷹」であろう。剣術・洋学修行に励む、若き日の勝麟太郎と、その父で破天荒な無頼漢として知られた勝小吉の物語である。 『とんび侍とは鳶(勝小吉)が鷹(勝海舟)を産んだ』からきている。初瀬(遠山金四郎の妹で元大奥勤め御女中)からの依頼で、御三家がからんでいる違法な無尽の調べに手をつける。勝小吉による自叙伝「夢酔独言」は有名だ。これに枝葉を付け講談調に仕上げてある。「とんび侍喧嘩帳120077月発行)も★★★★。

7月2日「待ち伏せ・風烈廻り与力・青柳剣一郎10」小杉健治2008年4月発行★★★★

 筆者・小杉健治は1983年に社会派推理作家としてデビュー注目され、今も現代小説、時代小説と多くの作品を発表、数々の賞に輝くベテラン作家だ。「風烈廻り与力」シリーズは彼の時代物の目玉で、この4年間に10冊といちばん出版数も多い。
 前半は多少廻りくどさを感じたが、後半は息つく暇も与えず、凄腕の殺し屋との因縁の対決まで突っ走る。風烈廻り与力とは
風の烈しい時に火災予防や、不穏分子の活動を防ぐために出役する掛りで他の部署と兼務が多い。

7月1日「さくら道・隅田川御用帳9」藤原緋沙子2008年4月発行 ★★★

 体調でも崩したのか、あるいは充電期間だったのか、昨年は2作品と寂しかった。縁切り御用をつとめる「橘屋」の女主人お登勢と浪人・塙十四郎の人情裁きを描く「隅田川御用帳」シリーズが復活した。2002年に「雁の宿」で華々しくデビュー、今は時代劇作家の中堅として、ほかにも5シリーズを発表し、ファンの期待に応えている。私の好きな作家の一人だ。

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