6月28日「木戸の裏灯り・大江戸番太郎事件帳11」喜安幸夫20083月発行 ★★★

 人に知られたくない過去を持つ四ッ谷左門町の木戸番・杢之助は静かに日々を送ることを願っている。しかし、町内でおこる、事件に次々と巻き込まれていく。「大江戸番太郎事件帳」の第1巻が出て、6年が経つ。そろそろマンネリか、始めの頃の新鮮さが感じられなくなった。もっとも、初めての読者には十分に堪能させられる、筆力をもつ作者には間違いないが。

6月22日「あだ惚れ・国芳一門浮世絵草紙2」河治和香200712月発行★★★★

前作「侠風むすめ」で時代小説界の注目を集めた新進作家、河治和香の第二弾である。主人公の江戸っ子浮世絵師歌川国芳とその娘、登鯉の魅力がたまらない。今回で大きな働きをするのが遠山の金さん。高野長英の脱獄にまつわる一件で、この金さんが見せた侠気が国芳たちの心を揺さぶる場面はこの巻のハイライト。時代小説好きの心をくすぐる仕掛けが満載だ、第1弾を上回る面白さは絶対お勧めものだ。作者は別名で映画の脚本も手掛けているらしいが、この実力は只者ではない。

6月13日「深川鞘番所」吉田雄亮20083月発行★★★★

 吉田雄亮は2002年「裏火盗罪科帳」で時代小説作家としてデビューした、私の好きな作家の一人だ。今回、作者の弁「無法地帯深川に凄い与力がやって来た!弱者と正義の味方」まさに売り込み通りの内容で、シリーズ次号からが楽しみだ。
 北町奉行所与力大滝錬蔵は、深川大番屋(通称鞘番所)支配を命じられた。奉行とつるんで米買い占めに走る越中屋を捕縛したための左遷である。江戸の無法地帯を舞台に、鉄心夢想流「霞十文字」が悪を斬りまくる。爽快な気分になるチャンバラ時代小説だ。

6月9日「居眠り磐音16・蛍火ノ宿」★★★★「居眠り磐音17・紅椿ノ谷」★★★★★

 ここ数日、期待をした割には、イマイチといった本を何冊か読んだ。途中で止めようかと思うが折角図書館から借りてきたこともあり、斜め読みも混ぜ、最後まで読む。
 やはり佐伯泰英は凄い。「居眠り磐音」は再読だが読み出すと時間を忘れる。「蛍火ノ宿」は、もと許婚だった吉原の白鶴太夫・奈緒が山形の紅花商人に落籍されることが決まるが、これを阻止しようする企みから、白鶴の周りで二人もの死者が出る。磐音は山形の紅花商人内蔵助に扮装し、まったく気付いていない白鶴の手を取り、千住大橋を渡り本当の内蔵助の元に届ける。踵を返す磐音に「おこん様を大事にしてください」という奈緒の声が聞こえた。

 「紅椿ノ谷」は、最近、気鬱ぎみのおこんを心配、医師の勧めで法師温泉へと旅立つことになる。道中、毎夜寝る前に、磐音はおこんの凝った足を揉みほぐしやり、おこんが湯に浸かる時は、磐音が外で見張り番をする。数日が過ぎた夜、白無垢姿のおこんが「今夜から私に世話をさせてください」と言い、磐音は「今宵からおこんと夫婦になる」と言い、しっかりとおこんを抱きしめた。

6月5日 「なみだ橋・百姓侍人情剣6」 笠岡治次 20085付き発行★★★

 第1話・「日陰の逃げ道」を読み、またかと思った。ここのところ、重く暗い時代小説を何冊か読んでいたからだ。百姓の娘が父親を殺し、その首まで切り落とす。なんともやりきれない話だ。「百姓侍」シリーズは今回で6冊目だ。主人公・茂平は十九の歳に村を飛び出し、江戸の町を転々とし、その人柄の良さから奉行所同心の婿養子になり、養父にかわり定町廻り同心を世襲した。武士には無いあっけらかんとした性格が面白く、好感度抜群で大好きなキャラだった。第2話、第3話とやっと本来の明るいペースを取り戻し。ホッとする。

6月2日「おしどり夫婦・砥ぎ師人情始末7」 稲葉稔 20084月発行 ★

 私は暗くて重い物語はあまり好まない。弱い女子供を苛め抜いたり、絞り取れるだけ金を貢がせ、女郎屋に売り飛ばす等々。だから最後に天罰が下されるのだと、納得できる結末が待っていようと、悪逆非道をつくす様を延々と書く必要は無い。不快感を覚える。エピソード風に入れておくだけでも、コイツは極めつけの悪人だと、読者が納得すれば良いのだ。
 稲葉稔の時代小説は、この「砥ぎ師人情始末」と「武者と行く」シリーズを毎号楽しみに読んできたが、今回はハズレ。途中からアイツしか犯人はいないと簡単に気づかれて居るのに、主人公達は無駄に駆けずり回っている。

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