5月29日 「ほおずき地獄・猿若町捕物帳2」 近藤史恵200210月発行★★★★

ほおずきを残してゆく幽霊。どこかに閉じ込められている「お玉」という少女。白髪の夜鷹。切れ切れに語られる様々な謎、その謎に先に見えたものは悲しい物語と事件の真相だった。舞台は吉原、艶っぽくしかし悲しい。「巴之丞鹿の子・猿若町捕物帳1200110月(★★★)の第2作目。「にわか大根・猿若町捕物帳3」(未読)063月発行がある。彼女の作品中で時代小説はこのシリーズのみ。
 同著者の警察小説「南方署強行犯係」は2冊で終わりらしい。もう少し読んで見たかった。ついでだが彼女の作で、自転車ロードレースを舞台にしたミステリイ「サイクリファイス」(2007年作)は各評価ベストテンの上位に名を連ねていた。その内に読むつもりだ。

5月23日 「侠風むすめ・国芳一門浮世絵草子」 河冶和香 20075月発行 ★★★

 「きゃんふう」と読み、オキャンな娘のことだそうだ。鉄火肌の浮世絵師・歌川国芳の娘「登鯉」の目から見た、自堕落な弟子達が集まる一門の大騒動。天保の改革をあの手この手と風刺する戯れ画を発表し、ついに国芳は奉行所に捕まってしまう。
 作中、浮世絵の中でもとくに春画の話がよくでてくる。以前にも「笠森お仙」で春信の美人画浮世絵を集めたことがある。浮世絵にも幾つかジャンルもあるらしいが、ネットからの浮世絵収集も面白かも知れない。

5月20日 「白桐ノ夢・居眠り磐音25」 佐伯泰英 20084月発行 ★★★★

 シリーズ最新版。今津屋から縫箔師に奉公替えした「おそめ」のその後や、佐々木磐音がまだ坂崎磐音として、用心棒稼業をしていた頃の友達・竹村武佐衛門との人情話に、磐音が自分を恥じるシーンなどは結構ぐっとくる。これここそが磐音なのだ、立身出世をし、多少経済的に恵まれてきても、いつまでも裏長屋住まいの気持ちを忘れない彼であってほしい、あと何巻で終わるのか、この物語がずっと続いて行けばと思う。

5月18日 「闇の掟・公事宿事件留書1」 澤田ふじ子 200012月発行 ★★★

江戸の時代小説を読み慣れていた私にとって、京ことば自体に多少戸惑いがある。竹内大の欠落ち」に続きこれも公事宿絡みという、今で例えるなら弁護士旅館のような機関を舞台に展開する。現役時代は奉行所でも高い地位にあった役人の妾腹の子、菊太郎を中心として、奉行所がらみの事件から、そうでないものまで毎回何かしらの事件が起こる。捕り物帳よりも人情的なストーリーが軸となっていて、ラストはしみじみ、ほろりとする部分が多い。全七編を収録した連作時代小説シリーズ

5月11日 「仮宅・吉原裏同心9」 佐伯泰英 20083月発行 ★★★★

巻末の解説は読売新聞記者の長井好弘氏である。『佐伯泰英氏と対談する機会があり、その時に作中に落語の手法を取り入れているという話が出た。古今亭志ん生の十八番「黄金餅」に、貧乏長屋の葬列の場面が出てくる。下谷山崎町を出発して、麻布絶口釜無村の木蓮寺に着くまでの道順を、一気に述べるというものだ。この「道中付け」を取り入れているのだそうだ』。確かに、これまでの佐伯作品は丁寧に道をなぞる場面が登場している。
 気が付くと、私も登場人物と一緒になって、江戸の町を駆け回っている。数年前に大枚をはたいて、江戸切り絵図を買った。一緒に駆け回っているうちに迷子になってしまうからだ。しかし切り絵図というのは、一枚一枚が東西南北に関係なく方向がバラバラなのだ。結局A3紙2枚を繋げ、江戸城を中心に東は亀戸・中川、西は内藤新宿、南は品川、北は千住・王子まで、私専用の江戸地図を作ってしまった。最近は何処を走ろうと迷子にならなくなった。これも佐伯作品の楽しみ方の一つだ。
 話を「仮宅」に戻すが、天明七年師走。吉原は十一月九日未明に炎上し、吉原会所の面々にとっては仮宅営業を余儀なくされた。妓楼が浅草界隈を中心に本所深川まで広がって、監督が難しくなっていた。炎上の時以来行方が分からなくなっていた、花魁の花蕾が死体となって築地川に浮かんだ。廓の用心棒。幹次郎の必死の探索が始まる。

5月5日 「迷い蛍・日本橋物語」 森真沙子 2007年10月発行 ★★★
 シリーズ2作目である。情理をわきまえた才色兼備の女将と評される主人公お瑛は、二十九歳になる出戻り女。突然、幼馴染の紙問屋主人の誠蔵が町方に捕縛された。罪状は御政道批判、彼を救うべく蜻蛉屋の女将お瑛の東奔西走が始まった。
 美しい江戸の四季を背景に、人の情けと絆を細やかに描く、短編六話。中堅女流作家の心にしみる本格時代推理。宇江佐真理の作風と共通したものを感じる。
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