4月25日 「犯人に告ぐ」 雫井脩介 2004年7月発行 ★★★★
 川崎市で起きた連続児童殺害事件の捜査は行き詰まりを見せ、ついに神奈川県警は現役捜査官をテレビニュースに出演させるという荒技に踏み切る。白羽の矢が立ったのは、6年前に誘拐事件の捜査に失敗、記者会見でも大失態を演じた巻島史彦警視だった。史上初の劇場型捜査が幕を開ける。一風変わった警察小説だが、十分な読み応えあり。
 以前は、警察小説に凝り、逢坂剛の「百舌シリーズ」森詠の「横浜狼犬シリーズ」「県警刑事シリーズ」などを読み漁ったことがある。どうしても警察組織の内情を暴くか、破天荒な刑事の活躍が多い。この「犯人に告ぐ」は一見型破りに見える劇場形捜査に自身を賭け、誹謗、糾弾を受けながらも、闇に身を潜める犯人を明るみに引きずり出していく。
4月22日「初音の雲・町触れ同心公事宿始末3」藍川慶次郎2008年3月発行★★★
 藍川慶次郎は好きな作家の一人だ。馬喰町の公事宿・鈴屋の女主人お寿々とその幼馴染で町触れ同心・多門慎吾、長沼道場の同門で定町廻り同心・白樫寛十郎らが市井の事件を絡んでいく。短編四話のうち「初音の雲」は、弘前津軽藩と南部藩の確執のなか、治安を守る職務と、不穏の動きをみせる真貫流同門の士との板ばさみになる。
 聞き慣れない町触れ同心だが、江戸時代の資料を調べみたが出てこない。作者によると、『町触れは、江戸に三人いる町年寄りを奉行所に呼んで法の改正等を通達し、町年寄りは町会所に町名主を集めて下達する。それから家主が裏長屋の店子に聞かせ、八百八町に触れわたる仕組み』となる。
4月17日「狐罠」 北森鴻 20005月発行 ★★★★
 何冊か続けて時代小説を読んでいると、食べ物と同じように、たまには変わった物を食べたくなる。図書館の書棚で、「狐罠」というタイトルが気になり、旧作だが借りてきた。内容は、古美術商を舞台とする、ミステリーだが、贋作をめぐる騙し、騙されに殺人事件と、それに関わる刑事が絡み。骨董業界の特殊な価値観に、いつの間にか納得させられてしまう。作者の力量が凄い。久し振りに3日掛かりで読んだ力作。
4月14日 「刺客の来る道」 風野真知雄 2008年1月発行 ★★
 謂われなき罪で藩を追われ浪人になり、妻子と長屋生活を始めるが、突然刺客に襲われる。江戸郊外に身を隠すが、執拗に追っ手がくる。読んでいるうちに、相手が異常性格の藩主なのであろうと、何故そこまでやるのかの必然性がみえてこない。作者の勝手な入れ込みようだけが伝わってくる、空回り小説だ。風野の作品は何点か読んでいるのだが。久し振りのハードカバー本なので入れ込み過ぎたのか。
4月6日 「影の用心棒」 芦川淳一 2008年3月発行 ★★
 発刊早々に図書館に予約を入れて置いたら、まっさらの新本が届いた。芦川淳一は始めて読む作家だ。浪人の似づら絵師(似顔絵描き)が事件に関わっていく。最初は藤井邦夫の作風に似ていると思っていたが、読み進むうちに藤沢周平の「用心棒日月抄」のパクリまがいが出てくる、少しやりすぎだ。主人公が時々笑いを意識して三枚目を演じるのだが、壮絶な真剣勝負の後となると、チグハグ感じは否めない。この1冊が実力なのかシリーズ物なので旧作をもう1冊読んで見るつもりだ。
4月5日 「十六夜華泥棒」 山内美樹子 20061月発行 ★★★
 伝説の美人、笠森お仙を主役にした捕り物帳。短編四話から構成されているが。どの話も登場人物が多く、お互いの関係が絡み合っていて、何回か前のページから読み直した。この作者はゆっくりと時間をかけ、何回も手を入れているうちにだんだんと複雑になってしまうのだろう。和久田正明の「夜桜乙女捕り物帳」シリ-ズの乙女(実は遠山町奉行の隠し子)は十手持ち娘目明しで、数々の修羅場に遭遇するが、お仙は明晰な頭脳で推理し事件を解明していく。娘捕物のもう一人、木村友馨「天眼通お蔦父娘捕り物話」は天眼通(千里眼)で十手持ちの義父を助ける、ほのぼの捕り物帳で、私は長身のお蔦が好きだ。
お仙シリーズ第2巻「善知鳥伝聞小町」は200711月出版とペースの遅い作家だ。
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