927日「元禄秘曲」 高橋義夫 20096月発行 ★★★★

 「オール読物」連載の新シリーズ物、短編7話をハードカバー化し出版。旗本の次男坊・花房百助が住込み弟子として修行中の、本所二ッ目橋・石川道場を舞台とする、お家騒動絡みの剣客小説。実力作家だけにそつなく読ませる。もし次の合本が出るとすれば、一年先のことになるが、月刊誌を買わずに我慢するのも楽しみの一つだ。

915日「ROMES06・誘惑の女神」 五條 瑛 20094月発行 ★★★★

現在NHKで放映中ドラマの原作である。作者は防衛庁を退職後、幾多の国際スパイ小説を手がけてきた、剣道二段の女流作家として知られている。内容は、西日本国際空港で開催される『魅惑のジュエリー展』を標的に強奪予告をしてきた国際テロリストに対し、最先端の警備シシテム・ROMESを駆使し迎え撃つ天才警備員・成島優弥との戦い。彼女の作品を読むのは、デビュー間もない頃の「プラチナ・ビーズ」以来7年ぶりだ。相変わらず硬質なエンタテイメント小説として読み応え十分な小説だ。
 私は感動を受けた小説のテレビドラマは観ないことにしている。小説の読者はみな自分のイメージで登場人物を頭の中に描いている、それがドラマを演じる役者と落差が大きかったときには、原作そのものが否定されたような悲しみを感じてしまうからだ。

912日「ジョーカー・ゲーム」柳 広司 20088月発行 ★★★
 第二次大戦のなか、スパイ養成学校“G機関”を卒業したスパイ達の活躍が五つの短編に収まっている。いずれも旧陸軍の愚かな体質を揶揄する口調で語られ、深刻であるはずの物語が軽いタッチで描かれ、読みやすいところがいい。
92日「池袋ウェストゲートパーク123」 石田衣良 1998年発行 ★★★★

 いまや若者達の間では、カリスマ作家的な存在である石田衣良が10年前に書いたデビュー作品だ。通称「I・W・G・P」、テレビドラマやコミック誌化され、本人もニュースショーのリポーターやコメンテーターとして引っ張りだこである。最近どの時代小説も同じような筋書きで飽きが来ていたので、別に年寄りが読んでも叱られないだろうと、手にしてみた。30年ほど前だったか、まだ大沢在昌が新人の頃、ノベルスの帝王と言われていた時代の作品「佐久間公シリーズ」を想い出した。大沢在昌の小説の舞台は、お洒落な六本木が多かったが、こちらはダサい池袋が舞台だ。果物屋の息子で普段は「池袋西口公園」に屯しており、池袋のトラブルシューターとも呼ばれる真島誠を主人公とする短編小説集だ。「オール読物」に連載され、現在第9巻まで発行されている。
 
いま、世間を騒がせている問題に、覚醒剤、MDMA等のドラッグや大麻の流行がある。有名女優が、髪を振り乱してレイヴ会場で踊り狂う映像が繰り返し流された。七月二十二日には、日本では四十六年ぶりという皆既日食に合わせ、奄美大島で密かに開催されたレイヴに、一部の有名芸能人が、参加していたこと明らかになった。このレイヴとドラッグが切っても切れない関係が克明に描かれているのが、七年前(2002年)に発行された「I.W.G.P第三巻・骨音」の第四話「西口ミッドサマー狂乱」である。
 親友のタカシから頼まれた仕事、それはレイヴの主催者と悪質なドラッグの密売人のトラブルの解決であった。両者とも公には出来ない立場にあり、まともにぶつかれば、死人、怪我人が出る。その決着方法にマコトは頭を悩ます。
 マコトは、初めて五千人集会の幕張メッセ会場で、レイブの初体験をする。まるで建築現場のような大騒音のなか、巨大なホールのステージにはテニスコートほどのディスプレイが設置され、興奮した若者たちが踊り狂っていた。深夜から翌日の朝まで疲れを知らずに踊り続けるのだ。体力に自信のあるマコトにも、とてもついて行けない。ドラッグの恐ろしさを知らされた。

 
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