224日「拒絶空港」 内田モトキ 20067月発行 ★★★★

 最近、読み切り時代小説文庫の軽さに飽きがきて、目先の変わった本を探してみた。昨年、内田モトキの「機体消失」という航空小説を読み、秒単位での緊迫した臨場感に興奮したことを思い出した。作者は全日空の教官で、現在もボーイング747の機長としても活躍中とのこと、この「拒絶空港」もパリのド・ゴール空港を飛び立ったジャンボ機が、離陸時にタイヤがバーストし胴体着離陸の覚悟での飛行中に、機内に放射線物質が持ち込まれた可能性があると連絡を受けた。航空管制官とベテラン機長との緊迫したやりとりが興奮もの。

220日「夢追い川暮色・奈落の銀次始末帖」本庄慧一郎 20091月発行 ★

 久しぶりの本庄慧一郎だったが、何度も途中でブン投げようと思った。本庄慧一郎の小説はもう少し面白かった筈だ。体でも壊していたのか、23年のブランクがあったが、いまだ体調が戻っていないのではないのか。

218日「ふたり写楽。もぐら弦斎手控2」楠木誠一郎 20085月発行★★★

 写楽は寛政6年に突如現われた浮世絵師。いずれも版元「蔦屋」から、役者絵を中心に彼の名前で150枚あまりの浮世絵が出版された。画風が段々と変化し、突如として出版されなくなったことや、本人についての記述が少ないことから、「謎の浮世絵師」と呼ばれ小説の題材にやすい。今回も、作者なりのオリジナル写楽像を書いてはいるが、思い付きにまかせて書いたようで、新写楽説としては軽すぎる。

216日「狐舞い・神田ひぐらし堂事件草紙」 鎌田樹 20086月発行 ★

 多くの時代小説作家が書き尽くしてきた題材を、王子稲荷の狐火にからむ主題に塗すという考えられない手法を使っている。注目を浴びている新進気鋭作家と紹介されているが、読み進む途中で、ナンダコレハという驚きに変わる。買ってくれた読者に申し訳が立たないだろう。出版元の徳間文庫に猛省を促す。

215日「雷神の剣・とむらい組見参」富樫倫太郎 20089月発行★★★★

富樫倫太郎と言えば奇怪小説。魑魅魍魎の世界で有名だ。10年位前に「陰陽寮・安倍晴明」を読んで以来だ。今回の小説には「物の怪」は出てこないが、その代わりに、テレビの「暴れん坊将軍」がそのまんま出てくる。直参旗本の倅たちの無法行為に怒った八代将軍吉宗の密命により「とむらい組」が編成され、町方や火盗改めでは取り締まれない無法旗本に対処する。さすがにベテラン作家だ。久しぶりに一気読みをしてしまった。最後のチャンバラシーンのくどい説明が無ければ、★は5個つけてもよかった。エンタメに徹するならば、ここまで書けばいい。

211日「御赦し同心」 木村友馨 200812月 ★★★★
 木村友馨が「天眼通お蔦」で文壇にデビューしたのは、200511月だった。私はその一冊で大フアンになってしまった。三年間で8作目がこの「御赦し同心」になるが、すでに大物作家の風格が漂ってきた。初めて彼女の小説を読む人が、並みの書き下ろし捕物帳や、剣客物と思ったら、大間違いにすぐに気が付くはずだ。気のきいたユーモアを随所に散りばめながら、スケールの大きい話を書き、ご丁寧に最後に大どんでん返しまで用意するという、サービス振りである。願わくは今後、売れるからといって量産作家の仲間に入り、水増し小説だけは書かずに居てもらいたい。
25日「月影の舞・立場茶屋おりき4」 今井絵美子 20091月発行 ★★★
 火事で失った茶屋の再建に奔走する最中にも、おりきは、きめ細やかな配慮で物ごとを収めていく。豊かな人間味を感じさせられる人情話である。前にも書いた記憶があるが、長台詞が、この作家の特徴だ。括弧が閉じるまで2ページにわたる長話が随所に出てくる。語る人間も疲れるだろうが、読む側も確かに疲れてしまう。忍耐強い読者向きだ。
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