1226日「陽炎裁き・裏火盗罪科帖9」吉田雄亮 200811月発行 ★★★★

 鎌倉の駆け込み寺・東慶寺を舞台に、寺役人に取立てられた旗本が、その立場を悪用し悪事を働く。まともには考えられない話だ。最後に、間諜として東慶寺に乗込んでいた裏火盗の一員・雪江が身を挺して住持・妙円尼の命を守ろうとする場面に感動した。この小説を読んで、当時、東慶寺のほかにももう一箇所、駆け込み寺があったことを始めて知った。上野国(群馬県)世良田徳川に在った満徳寺である。徳川家康の孫・千姫が本多忠刻と再婚したときに、東慶寺とともに認可され、千姫お付の腰元・刑部卿局が千姫の身代わりとして、剃髪、出家し住持として満徳寺に入ったそうだ。

1213日「巣立ち・お鳥見女房5」 諸田玲子 200811月発行 ★★★★

お鳥見とは、将軍家お抱えの鷹匠の部下で、鳥見役の矢島家の次男・久之助が大御番組与力の家に養子縁組が決まり、長男・久太郎も嫁を取ることになった。相手は失脚した老中水野忠邦に連なる家の「鷹姫」と呼ばれる娘だった。珠世は女房から姑へ、肩の荷を下ろせるはずが、これまでにない苦労と試練に立たされることに。 そして婚礼でも思わぬ波乱が、お鳥見女房・珠世は持ち前の機微と情愛で家族を包み込んでいく。ベテラン諸田玲子の作品。

1211日「深川にゃんにゃん横丁」 宇江佐真里 20089月発行 ★★★★

 宇江佐真里の真骨頂、小話6編からなる深川人情話である。とくに猫好きの私にはたまらない。突然姿を消した野良猫・まだら探し、「まだら、まだら」と気が触れたように泣きながら毎日深夜まで町内を探し回っていた、富本節の師匠・おつがが、やっと見つけた「まだら」を胸に抱え息絶えていた。「まだら」もおつがの腕の中で冷たくなっていた。
 中学生のころ可愛がっていた猫が突然居なくなり、猫好きの母親と一緒に、猫の名前を呼びながら、夜遅くまで探し回ったことを思い出した。ちなみに私のペンネームはニャンパパ。

126日「伴天連の呪い・道連れ彦輔2」 逢坂剛 200811月発行 ★★★★

道連れ屋こと御家人三男坊・鹿角彦輔は剣友でもあり、御目付け差配の神宮迅一郎から頼まれ旅の道連れや、いわく付の人物探がしで小遣いを稼いでいる。オール読物連載の短編6編から成る。中里融司の小説に「同行屋稼業」という用心棒の一種であるが、似たような話だ。お互い両者とも、血なまぐさい修羅場も出てくるが、こちら「道連れ彦輔」の方は多少のユーモアも交えながら結末は明るく締めているとこがいい。

121日「不知火鏡・稲光の源蔵裏裁き」 飯野笙子 200810月発行 ★★★

前作「橋詰ちょうちん」では年増ながら艶っぽい女将・おたかが主役で、岡っ引稲光の源蔵は引き立て役であったが、今回の「不知火鏡」ではサブタイトル通り強持ての岡っ引の源蔵が主役に踊り出た。作家・藤井邦夫の作風を思い出す、人情裁きが冴える。飯野笙子は作品数こそ少ないが一作一作丁寧に書いていることがよく解かる。

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