125日「不忠者・結城半蔵事件始末」藤井邦夫 200812月発行 ★★★

 世継をめくるお家騒動に巻き込まれた武士達が、勝ち組か負け組みかによって、「忠義者」か「不忠義者」なってしまう。半蔵は、虚しさと理不尽を覚えずにいられなかった。藤井邦夫の新シリーズだが、量産作家になってしまった為か、筋立てが荒っぽく、水増しの文章が目立ってきた。私の好きな作家だけに、ゆっくりと落ち着き、初心にかえり、読み終わったあと感動を覚えるような作品を書いてほしい。

119日「夜盗」 なかにし礼 200312月発行 ★★★★

 23年前だったか、テレビドラマで、なかにし礼原作の「夜盗」が放映されたことを覚えていた。「石狩挽歌」などで有名な歌謡曲の作詞家だが、小説作家としてもでも、2000年「長崎ぶらぶら節」で直木賞を受賞したりして活躍している。たまたま手元に読む本が無く、図書館で「夜盗」が目に付き借り出してきた。
 近く定年を迎える老刑事・柏田源吉が執念で追う盗賊犯が、少年時代を過ごした孤児院で、運命的に出会い、その後も見守り続けてきた少女・マリアなのか。じわじわと犯人を追い詰めて行く刑事と、あたかも追い詰められていることを承知で待っているような犯人、これは刑事小説ではなく、間違いなく恋愛小説だ、最後に妙な感動をおぼえる。

114日「花宵道中」 宮本あや子 20072月発行 ★★★

『女による女のためのR‐18文学賞』受賞作ということだ。R‐18とは成人向け作品。男が読んではいけない訳でもないと思い読んでみた、確かにいわゆる通俗官能本とは、一味違う小説のようだ。しっかりとした時代物を書くには、それなりの勉強が必要だが時代考証も確かだ。廓ものばかり、五作品で構成され、それぞれ力作揃いだがやはり暗い、私は暗いのは苦手だ。以前に、作家としてはマイナーだが、その道のマニアならよく知られている、山藍紫樹子という女性作家の小説を何点か読んだがある、独自の世界観をもった作家だ。この宮本あや子も通俗作家に落ちずに、たとえ官能小説であっても、絶対に量産を避け、独自の世界観をもった作家に成長してほしい。

110日「寒椿ゆれる」近藤史恵 ★★★★

短編三話で構成。捕物帳としては、全体が長閑であり、かつ切なく、そして最後には「あっ!」と言わせる落ちが付いている。これが近藤史恵なのだ。「猪鍋」評判の猪鍋屋に起こった事件とその背景。「清姫」千陰の友人・巴之丞が刺される、歌舞伎ミステリー。「寒椿」強盗事件の犯人に仕立てられた奉行所同心・大石と千陰のお見合い相手のラブストーリー。義理の母・お駒さんの出産も近く次号が楽しみだ。

18日「五万両の茶器・新九郎外道剣」小杉健治 200811月発行 ★★★

 主人公・柴新九郎、人を切るのにまったく躊躇なく、女も見境なく犯すという、まさにサブタイトル通りの外道のキャラだ。一応は百五十表三人扶持の御家人で、小普請組に属している。何も仕事が無く、扶持だけでは食ってはいけず、用心棒まがいや、事件に首をつっこみ日々を暮らしている。ただし、救いは若干の正義感は持っていることか。第2巻以降、どう展開するか楽しみだ

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